資料室

幻の『ガリバー旅行記』と『竹取物語』

切り絵とセロファン影絵という二つの技法を追求した大藤が、その生涯の仕事の集大成として構想したのが、『ガリバー旅行記』と『竹取物語』であった。それまでのすべての技術を踏まえたシネマスコープ・サイズによる長篇作品として大藤はこの2作品に精魂を傾けたが、逝去のためにいずれも完成には至らず、台本やトレース画、セル画などの資料だけが部分的に遺されている。

逝去と「大藤信郎賞」の設立

1961年に大藤が脳軟化症で急逝すると、姉の八重が毎日映画コンクールに私財を寄贈、これを基にして1962年(第17回)より同コンクールに「大藤信郎賞」が設けられた。この賞は、アニメーション映画の領域で優れた成果を挙げた個人やグループに贈られるもので、これにより大藤の名は後世に残ることとなった。なお、同コンクールは1989年(第44回)から「アニメーション映画賞」を新設したため、その後は主に実験的なアニメーション映画を表彰対象としている。 ※「大藤信郎賞」受賞作一覧 (毎日映画コンクール http://mainichi.jp/mfa/)

大藤と八重の墓所は、神奈川県・国府津の時宗蓮台寺にある。