私の選ぶこの作品
各界の専門家や著名人から日本アニメーション映画クラシックスの作品群より注目の作品を紹介していただきました。
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宮本大人さん(明治大学国際日本学部准教授)
明治大学国際日本学部准教授。漫画史・表象文化論。編著に『江口寿史 KING OF POP Side B』(青土社、2016年)。
宮本大人さんの選んだ作品
- この作品を選んだ理由
- 多種多様な実験的作品を手掛けた荻野茂二。この「日本アニメーション映画クラシックス」では、まさかの人形アニメ『FELIXの名探偵』から、本作のようなオスカー・フィッシンガーを思わせる抽象アニメーションまで、荻野の複数の作品が楽しめる。フィッシンガーの作品が音楽の視覚化だとすれば、無声映画の本作は、むしろ視覚表現に音楽性を与えるものとなっている。幾何学的な模様ではあるが、シンメトリックではない曲線のうねりで構成された本作が、個人的には最も生理的快感がある。今日のミュージシャンにこの作品に添える音楽を競作してもらったら面白そうだ。
- この作品を選んだ理由
- 1917年にアニメーションを作った3人のうちの1人である北山清太郎に技術を学び、戦後は東映動画で後進の指導に当たった山本早苗は日本アニメーション映画史のキーパーソンの1人だ。このサイトで観られる1928年の『お伽噺 日本一 桃太郎』と本作を比べると、10数年でいかに表現技術が発展したのかがうかがえる。本作は、物語そのものは単純な勧善懲悪ものだが、動きの表現には妙に生々しいというか微妙にエロいというか、独特の魅力がある。クライマックスのアクションシーンは奇抜なメタモルフォーゼのみならず、奥行きの利用、アングルの変化など、アクションを面白く見せるためのアイデアがふんだんに詰め込まれている。
- この作品を選んだ理由
- 山本早苗の『なまけぎつね』と同じ年に、同じ文部省映画として公開された作品。『なまけぎつね』は怠け者で卑怯者のきつねが働き者のたぬきにやっつけられる単純な勧善懲悪ものだが、アリとキリギリスの寓話を思わせる設定で始まる本作は、音楽好きのキリギリスを悪者に仕立てることもなく、むしろ楽器と音楽に惹かれたアリが自らの過ちに気付くという物語になっているところが目を引く。動きの表現もこの時代の最高水準にあると言えるが、持永只仁が手掛けた、マルチプレーンで撮影され奥行き表現の強調されたタンポポの綿毛の下をアリがスキップするシーンは、今見ても素晴らしい。
選定作品1荻野茂二『RHYTHM(リズム)』(1935年)
選定作品2山本早苗『なまけぎつね』(1941年)
選定作品3瀬尾光世『アリチャン』(1941年)
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