私の選ぶこの作品
各界の専門家や著名人から日本アニメーション映画クラシックスの作品群より注目の作品を紹介していただきました。
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李剣平さん(北京電影学院動画学院院長)
日本アニメーション映画クラシックスによって、日本の初期アニメーション作家たちの姿勢や探求心をうかがい知ることができた。本サイトでは、この時代の日本の作家たちが多様な表現を求め、実験を試みた作品を、数多く見ることができる。いくつかの作品にはアメリカからの影響が残っているが、演出、カメラワーク、キャラクターデザインにおいては、日本の民族的特徴が強く見られる。また、物語にも隠喩と政治的寓意が含まれ、作家たちの国家、階級、人間関係への考え方が、アニメーションを通じて伝わってくる。サイトの利用者には、こうしたことから、この時代の歴史を理解してもらい、また作家の主張を感じてもらえることだろう。様々な意味で本サイトの作品群は、現在のアニメーション作家が学ぶべき、重要な資料である。
呉子珺さん、ほか(北京電影学院動画学院院生)の選んだ作品
- この作品を選んだ理由
- この作品は、18分もあるストーリー性の高いアニメーションである。たくさんの優れた作品の中で、『心の力』は独特なユーモアと浮世絵的な絵柄で私の目を引きつけた。本作品のストーリーからは、「自分を信じる」というテーマが浮かび上がる。人は他人や神の力を借りずに目標を達成できる。この話からは、大藤信郎の自信がうかがえる。作画の点から見ても、この作品は先進的な表現を行っている。たとえば本作品はサイレント映画だが、キャラクターの会話ではない効果音の表現では、漫画の手法を取り入れている。また、千代紙の作品であるため、透視図法なしの平面的な画面構造になっているが、ショットの繋がりは混乱せず、空間の配置がはっきりしている。物語のテーマは深いが、演出はユーモアに溢れ、大藤信郎独特の、アニメーションのリズムを奏でる力を感じることができる。アニメーターにとって、たいへん学ぶ価値の高い作品であり、一般の鑑賞者にとっても面白いアニメーションである。
- この作品を選んだ理由
- 『切紙細工 西遊記 孫悟空物語』を選んだのは、この作品が大藤信郎の挑んだ、日本における早期の『西遊記』のアレンジであり、作品中で中国の伝統文学と日本文化とが絶妙に融合しあっているからだ。富士山のような山が現れるシーンを見たときには、その奇妙なドッキングに、思わず笑ってしまった。作品はわずか8分の長さで、三蔵法師が弟子三人と出会って西天取経を達成するように、内容が簡略化されている。しかしキャラクターは、どこか中国風な切り紙(剪紙)で表現され、洗練されたそのデザインは、現在から見ても可愛らしく感じる。他方、本作品からも日本的な様式美が感じられる。作品全体のデザイン、タイトル、字幕の描き方などのすべてが統一され、工夫が施されている。この点についても繰り返して見て、研究する価値がある。
- この作品を選んだ理由
- このアニメーションは、日本の民話に基づいた染色作品である。ストーリーの完成度は高く、感情表現も魅力的である。キャラクターデザインがリアルで、演出は繊細で明快だ。 特筆すべきは、本作の光と影の表現である。明暗の描写によって、絵本のような質感で全体が調和している、昔話にぴったりな雰囲気が作り上げられた。本作の中には様々に、日本の伝統的要素が溢れており、強固な民族的特徴が印象深い。また、シーンの繋がりやカメラワークなどは技術の制限によって単純だが、キャラクター描写の豊かさで、単調な鑑賞体験になることを回避できている。切り紙アニメーションとして、とても興味深い作品であり、現在のアニメーターにとってもいい参考になるはずだ。
選定作品1大藤信郎『心の力』(1931年)
選定作品2大藤信郎『切紙細工 西遊記 孫悟空物語』(1926年)
選定作品3村田安司『瘤取り』(1929年)
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