私の選ぶこの作品
各界の専門家や著名人から日本アニメーション映画クラシックスの作品群より注目の作品を紹介していただきました。
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小野耕世さん(映画マンガ評論家)
映画マンガ評論家。東京工芸大学芸術学部客員教授。日本マンガ学会会長。著書に『世界のアニメーション作家たち』(人文書院、2006年)、『長編マンガの先駆者たち』(岩波書店、2017年)など。
小野耕世さんの選んだ作品
- この作品を選んだ理由
- 後にディズニーがシリーシンフォニー・シリーズのカラー短編アニメにしたイソップ寓話の精巧極まる切り絵アニメ。技法の見事さはもちろん、かつての日本人の暮らしの風景を四季の自然とともにとらえた画力の確かさに感嘆する。ヒマワリにとまるトンボ、夏の雲、着もの姿で歩くアリ。木枯らしの冬、家のなかで遊ぶ子ども、夫婦仲の良い様子、おばあさんのたたずまいなど「夏うたうものは冬に泣く」の教訓以上に、ある時代の日本の家族の姿が、まるで彼らの声がきこえてくるかのように実感をもって展開されているのに圧倒される。しみじみと味わい深い、虫になぞらえた人間模様だ。
- この作品を選んだ理由
このコレクションに収められた荻野茂二の六作品は、オスカー・フィシンガーやノーマン・マクラレンに通じるイメージのカレイドスコープ群としていまなお新鮮だが、あえて内容に混乱が見られるこの初期作に惹かれるのは、例えば服の模様を瞬時に交える〈色彩機〉などの発想のユーモアが私のSFごころを刺激するからだ。東京の未来風景などには1931年日本公開のアメリカ映画『五十年後の世界』の感化があるかもと思わせもする。そして月を超え、すい星を追いこし火星とその彼方をめざす〈十万億土への旅〉はちょっと『2001年宇宙の旅』の思弁性に通じないかと深読みしたくもなる。 - この作品を選んだ理由
- その見事な詩情とユーモア、音楽のすばらしさでディズニーのシリーシンフォニーのカラー作品に決して劣らない〈色彩の豊かさ〉を感じとらせるこのモノクローム短編は、人間の子どもの手が見えたり、ちょっとフライシャー兄弟による長編『バッタ君町に行く』(1941)を思わせる部分すらある。コスモスの花などの自然描写も細やかだ。タンポポの綿毛が飛ぶシーンは、瀬尾の長編アニメ『桃太郎 海の神兵』(1945)にも用いられた。そして、2020年の東京パラリンピックに向けてマンガ家たちが作る短いアニメ作品のひとつにも綿毛の場面があると知った。また、『アリチャン』全体が示す疾走感はすばらしい。
選定作品1村田安司『漫画 二つの世界』(1929年)
選定作品2荻野茂二『百年後の或る日』(1933年)
選定作品3瀬尾光世『アリチャン』(1941年)
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