私の選ぶこの作品
各界の専門家や著名人から日本アニメーション映画クラシックスの作品群より注目の作品を紹介していただきました。
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とちぎあきらさん(東京国立近代美術館フィルムセンター主幹)
『月刊イメージフォーラム』編集長やフリーのライター、翻訳業を経て、2003年よりフィルムセンターにて映画の収集・保存・復元・アクセス対応に従事する。本年4月より現職。
とちぎあきらさんの選んだ作品
- この作品を選んだ理由
- 切り紙法の巨匠・村田安司が、文部省の委託を受け、アリとキリギリスの物語を映画化したアニメーション作品。当時横浜シネマ商会にいた村田は、洋バサミで巧みに切り抜いたケント紙の原画を、導入したばかりの自動撮影台で、根気強くコマ撮りしていったというが、にわかに紙を動かしているとは信じられないくらい超繊細な線と動きが、イソップの寓話をSF的な黙示録の世界へと変幻させてしまう。元素材となったプリントは、岩手大学で見つかった、染色もあざやかなかつての配給用可燃性フィルム。当時の人々がこんな美しいフィルムで漫画映画を見ていたのかと思うと、ただただうらやましい。
- この作品を選んだ理由
- かつて荻野茂二という映画作家がいた。東京・巣鴨の炭屋に生まれ、1920年代後半から独学で映画づくりをスタート。50年以上に及び長いキャリアのなかで、400本以上の作品を創った、日本におけるアマチュア映画のパイオニアの一人である。その荻野が、同時代の前衛芸術に刺激を受け、「ある表現」と大見得を切って発表した抽象アニメーション。かたち、動き、色という映像の基本的な要素を、極限まで純粋化させることによって生まれる不思議な高揚感。二原色による色再現を狙って撮影されたフィルムが放つ色と光の乱舞に、君はついていけるか。
- この作品を選んだ理由
- 鯨群の蹂躙に業を煮やした魚群が、知恵と工夫を凝らして、強敵を撃滅。ところが、勝利の美酒に酔い痴れているうちに、魚たちは漁師の網に次々と引っ掛かってしまう…。時局へのアレゴリーと、「勝って兜の緒を締めろ」と言わんばかりの教訓は、まさに文部省映画に適った一篇だが、鯨に喰われた魚が、頭と尻尾と骨だけで、スイスイ泳いでいる姿なんて、誰が思いつくだろうか。そんな大人の味のギャグや諧謔が、そこここに潜んでいる。山本早苗や大藤信郎と同じく、第二世代のアニメーターとして精力的な活動をしていたにもかかわらず、不幸にして、今やほとんど忘れられた存在になってしまった木村白山。でも、この人、きっとそのうちに来ますよ!
選定作品1村田安司『漫画 二つの世界』(1929年)
選定作品2荻野茂二『An Expression』(1935年)
選定作品3木村白山『漫畫 魚の國』(1928年)
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