私の選ぶこの作品
各界の専門家や著名人から日本アニメーション映画クラシックスの作品群より注目の作品を紹介していただきました。
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山村浩二さん(アニメーション作家)
1964年生まれ。2002年『頭山』が主要なアニメーション映画祭で6つのグランプリを受賞、第75回アカデミー賞®短編アニメーション部門にノミネートされる。映画芸術科学アカデミー会員、東京藝術大学教授。
山村浩二さんの選んだ作品
- この作品を選んだ理由
- 雪の降り積もる厳しい冬、なかなか食料にありつくことができない狸の親子。だがそこに悲観はなく、楽しいエピソードが繰り広げられる中、やがて春がやってくる。アメリカン・カートゥーンの影響も感じられる柔らかで愛嬌のある動きで、懐かしい音楽に包まれながら、飄々と意表を突くユーモラスな展開。羽をむしられた鳥がくしゃみをすると、ポン助の色が白くなるのは、幻覚モードなのか、意図は定かではないが他にあまり例のない試みだ。狸の家にある民芸調の仮面や、歌う花など、昨今の日本のデザインを思わせるようなキャラクターたちが、クレージーな脇役として登場するのも魅力的だ。大石郁雄の才能に、若くして亡くなったことが惜しまれる。
- この作品を選んだ理由
- 荻野茂二の自由な発想による2032年未来への旅。SFアニメーションとして世界史的にも最初期のものだろう。50年代のカレル・ゼマンまでは、おとぎ話か現代もしくは時代設定の不明な物語がほとんどだった。切り紙アニメーションを中心に、実写と合成されていたり、爆発シーンでは砂アニメーションも使っている。過去も未来もわかるというマジックテレビジョンは今のインターネットを連想させ、磁気応用の列車はリニアモーターカーだろう。1933年の時点で第二次世界大戦を予見し、自分自身が1942年の世界大戦で死ぬという悲観と、100年後には霊を蘇らせる技術への希望と、未来への複雑な思いがみられる。
- この作品を選んだ理由
- 大藤信郎が、実写と切り紙アニメーションの合成を試みた作品。5年ほど先行して、同じく実写と絵を合成したフライシャー兄弟の『インク壺の外へ』シリーズ(1919年〜)を連想させるが、国内では合成作品として最古。大藤の劇場初公開作品『馬具田城の盗賊』と同じ制作年だが、1924年制作との考証もあるので、最初期の作品としても興味深い。実写で日本髪のお嬢さんが登場し、時々スチール写真を組み合わせ、切り紙アニメーションの小さな男が「煙草」の起源について語り始める。『煙り草物語』の送り仮名「り」を小さくデザインしているタイトル画面を見ると『若草物語』のパロディのようにも。後半の発見が期待される。
選定作品1大石郁雄『ポン助の春』(1934年)
選定作品2荻野茂二『百年後の或る日』(1933年)
選定作品3大藤信郎『煙り草物語』(1926年)
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